あ行/か行さ行た行な行は行ま行や行ら行
スペースオペラ用語辞典/あ行

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アインシュタイン[あいんしゅたいん](参考)

  1. 相対性理論を構築し安易な宇宙活劇を書きにくくした張本人だが、同時に面白いハードSFのネタも山ほどプレゼントしてくれた偉い人。
    人柄も大変気さくで(おまけに美人に弱い!)良ーい人だったらしい。

  2. 相対性理論を理解できない(理解しようとしない)人から、やっかみ半分の中傷誹謗を浴びせられている誠に気の毒な人。


青写真[あお・じゃしん](参考)

  1. 図面を青焼きコピー機で複写したもの。白地に青の仕上がりになるのでこう呼ばれる。ブループリントとも言う。子供雑誌の付録につく日光写真と同じ原理ですねって、順番が逆か!

  2. 筆者が入社したころ(昭和56年!)は、まだブループリントの図面がまだハバを効かしていてびっくりしたものである。今ではもちろん、ゼロックス・コピーに押されてなくなっちゃいました。


青背[あお・せ](参考)

  1. 早川文庫SFの内、背表紙の地色が青い(ブルーグレー)ものの通称。

  2. どこにも明記されていないものの、青背の文庫本はプロパーSFが中心になっているようである。以前にハヤカワSFシリーズに収録されていた作品の文庫化をする際にこのような習慣が始まったらしい。従来の文庫の中心であった娯楽性の高い作品やジュヴィナイルに近いものと、SFシリーズ収録作品(黄金の50年代作品が多くを占める)とは区別したかったのであろう。

  3. 読者側に「青背はちょいとグレードの高い作品」というイメージがあるためか、これを当て込んでやたら青背にして出版していたような時期もあったようで、この分類も最近は余り当てにはならない。

    「宇宙の戦士」が白背で「人形つかい」が青背、「超戦士コブラ」が白背で「ブラックカラー」が青背というのは、やっぱり納得いかんよなあ。


亜音波[あ・おんぱ](参考)

  1. ストレートに受け取れば「音波みたいなもの」という意味だが、英語では Sub-Sonic と表記されることから超低周波という意味で使われることが多いようだ。

  2. “宇宙のスカイラーク”に登場する亜音波(亜音波砲)も、スカイラーク号の外壁を通して侵入してくるところから、超々低周波の音波のように思われる。ただし、明らかに超音速で飛行中のスカイラーク号に対して浴びせられるところから、オスノーム星の大気中伝播速度は地球上の音速の数十倍以上であろうと推察される。目標の速度に対して伝播速度が十分速ければ、拡散しやすい音波は命中し易い良い兵器なのであろう。


悪魔の辞典[あくま・の・じてん](参考)

  1. シニカルな視点から書かれた傑作辞典。著者A・ピアス。現在でも文庫本で入手可能。SFファン必読の名著のひとつ。

  2. かつては筒井康隆氏の“乱調文学大辞典”など、今またインターネット上に存在するあまたの“辞典”“用語集”のお手本の一つとなった。

  3. この用語集も“悪魔の辞典”および“プロ野球辞典”(著者・玉木正之)に多大の影響を受けている。

  4. 玉木さんへ、そろそろ“プロ野球辞典”の最新版を読みたいです!。


悪役[あく・やく](参考)

  1. 横文字ならば“Villan”、古い言い方では“悪玉”などともいう。

  2. 活劇大冒険ものに欠かせない、もう一人の主役が悪役である。どんな名探偵も大犯罪者なしでは腕をふるえず、またいかなるスーパーヒーローとて大悪役なしでは活躍できないのだ。

  3. ただ強くて悪いだけでは真の大悪役とは言えない。憎まれながらも愛されなければ2流である。
    この点スカイラーク・シリーズにおけるデュケーヌ博士はまぎれもなく一流の悪党だが、ほかの悪役宇宙人どもは(エッドール人でさえも!)ただのやられ役といえるのではないか?。

    おおっ、もちろんあなたのことも忘れてはおりませぬ、火星の魔術師ことクォルン博士!。


穴空きテープ[あなあき・てーぷ](参考)

  1. 正しくは穿孔(せんこう)テープ。穴の空き方でデジタルデータを表現できることから初期の電算機の外部記憶として使われた。昔のフロッピーディスクみたいなもんと思えば良いであろう(フロッピーと違って、こちらは書き換えは出来ないが)。形態から言うと、バックアップ用の磁気テープの方がこいつの子孫と言えるかもしれない。

  2. 昔のSF映画やアニメーションでは、科学者や技術者とおぼしき白衣の人物が、読み取り用の機械(テープリーダ)も使わずテープから計算結果などを直接読み取るシーンが見られたものである。

  3. 筆者が入社したころ(昭和56年!)には、ほんの一部の製品にまだ紙テープ記録が使われており、本気で驚いた覚えがある。

  4. 追記.最近の日経バイトで「とうとうフロッピーが使われなくなった」という主旨の記事が載っていました。上の説明に注記する形で「フロッピーディスク」の項目が必要な日もさほど遠いことではないのかも?


アニメ版キャプテン・フューチャー[あにめ・ばん・きゃぷてん・ふゅーちゃー](NHK総合TV)

    古手のファンとしては、まあ言いたいことは色々ある。
    おそらく製作者サイドにも山ほど言い分はあろう。
    またファン層を広げたのも事実であるし、大体が映像化されたことだけで特筆すべきことである。

    よってここでは一つだけ。主題歌が素晴らしかった。ほんとに。


アレナック[あれなっく](宇宙のスカイラーク)

  1. ほぼ透明に近く、最良の鋼鉄の数百倍の強度を持った超合金。

  2. 惑星オスノームで開発され、リチャード・シートンらにより地球に紹介された。

  3. その精錬には触媒として塩化ナトリウム(食塩)が必須とされる。惑星オスノームには塩化ナトリウムが非常にまれにしか存在せず(全てを集めても食卓塩1びんに満たないとされている)、これがアレナック合金量産の大きな障害であったが、地球との交易により安価に塩化ナトリウム入手可能となり解決した。

  4. 初登場の折には正に“超合金”と呼ぶにふさわしい代物であったが、シリーズが巻を重ねるに連れてランクダウンし、最終的には“ポピュラーな構造材”扱いとなったようである。

  5. ところで、元々ほとんど存在しなかった塩化ナトリウムを地球から大量に輸入して、惑星オスノームの生態系に影響はないのであろうか?人ごとながら心配ではある。

  6. それにしても、太平洋戦争で日本軍を勝たせようと思うなら、「アレナック製の軍艦」位は出して欲しいものである。この場合、航空攻撃では大型艦を撃沈するのは不可能であろうから、自然に「大鑑巨砲SF」になること請け合いである。どうです?楽しそうでしょう。
    それでもって、発明者は「帝大が誇る冶金学の天才兜博士」にしてくれないかな? もちろん日本側の秘匿名称は「Z合金」である。


暗黒星[あんこく・せい](参考)

  1. 寿命の尽きた恒星、または肉眼では見ることのできない恒星を指したものと思われる。

    恒星の燃料は表面の水素であるから、これが燃え尽きた後には中心部分が「芯」として残る筈で、中心核の部分には当然重い元素が集まっているであろう。もしくは恒星内部の高温・高圧でしか精製不可能な特殊な物質が存在しているかもしれない...とまあ、宇宙活劇においてはこのような設定が多い様である。

    キャプテンフューチャー・シリーズにおいて、暗黒星表面から「燃え残り」の資源を採掘するシーンがたびたび出てくるが、さすがのハミルトンも、この場合は直接つるはしでエッサカホイサカ掘り出すと言う乱暴なことはさせず(できず)、最初にプロトン砲で表面をふっ飛ばして採取という手順を踏んでいる。
    ...と思い込んでいたんですが、念のため原作をチェックしたところ「恒星表面からエッサカホイサカ掘り出す」シーンは数箇所有るみたいです。それどころか「燃え尽きた太陽の表面で野宿する」シーンまでありまして(in 輝く星々のかなたへ!)うほほっ、ハミルトンに惚れ直しちゃいました。

  2. 古典的な探偵小説において、正体の知れない危険人物(犯人)という意味に使われることも有る。
    昔国内ではSF専門の発表媒体がなく探偵小説誌などに掲載されていたこともあり、かつては「科学小説」は探偵小説の変形・一部という位置づけの時代もあったようである。
    事実読者の一部は重複しており(これは現在でもそうである)、犯人を暗黒星に見立てるというのも、こうした読者層を意識した一種のサービスと考えられないことも無い。


暗黒星雲[あんこく・せいうん](参考)

  1. 地球から観測すると「真っ黒なしみ」のように見える星雲のこと。
    他の空間に比べて「星間物質」の密度が特に高いため、可視光線が吸収されて「暗黒」に見えるものだそうです。名前から連想するような特別な暗黒物質があると言う訳でなく、おそらくはありきたりのチリやガスの集まりなんでしょう。

    天文学のガイドブックなどを読む限り、実際の暗黒星雲内部の「暗黒物質の密度」そのものはさほどでなく、「一寸先は闇」とか「ロンドンの霧」のようなもの等ではないようである。
    こちらから透けて見えないのであるから、暗黒星雲内部から太陽方向を見てもほとんど見えないのかも知れないし、所謂「天測」は非常に困難であろうと思われるから「宇宙の難所」であることには変わりがなかろう。

    まあ、「もう少しの間」は誰かが行って確認するということにはならないであろうから、面白おかしく書いたモン勝ちですが。

  2. クラシックSFでは「身も心も暗黒」の悪い宇宙人が住んでいることになりがちですけど、「星間物質の密度がとりわけ高い」=「宇宙空間に多量の資源が浮かんでいる」ということですから、わざわざ我々の銀河系(星間物質に乏しい貧乏ったらしい銀河!?)に出稼ぎに来る必要もないんですね。(だから悪い宇宙人は来ない?!)


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E=MC2[いー・いこーる・えむしーじじょう](参考)

  1. 我々の宇宙が比較的平穏かつ退屈(?)なのは、この式の存在によるところが大きい。

  2. ところで、筆者には昔から“素朴な疑問”に思っていることがある。この式の意味する様にエネルギーと物質は等価であり、これは化学反応においても成立する訳である。すると、H2コ+O1コで水が出来たときの分子の質量はもとのH2コ+O1コの質量合計よりはちょっぴり少ない。つまり酸素が燃焼したときの発熱分のエネルギーが外へ出ていったのであるから、この分どこかの質量がちょいと減っていると考えて良い筈である。

    さてそれでは具体的にはどこが減っているのであろう?原子核のどっかがちょっぴり欠けているというのも想像しにくいが、はてはて??


印刷回路[いんさつ・かいろ](参考)

  1. プリントバン(Printed-Circuit-Board,略称PCB)のこと。絶縁材の板に薄い(厚さ数十ミクロン)銅板を貼付け、これに配線のパターンを印刷してマスクとし、薬品で必要なところ以外を溶かして配線を形成したもの。微少・複雑な配線が容易に量産できるため、電子機器の配線板として普及している。

    上記の様にして作った回路層を4,6,8層と数多く重ねあわせた上に、これらの回路層を厚さ方向に互いに接続するなどして3次元的に回路を形成し、非常に高密度な回路を配線できる。

    基板の材質によって「硬い」ものと「自由に曲がる」ものがある。

  2. 「バベル17(byサミュエル・ディレーニィ)」等のように、翻訳者によっては「印刷回路」と直訳されていることもあるが、こんな事を気にする人は....まあ、筆者くらいでしょうな。

    一般には「プリントバン(プリント板)」と言う呼称を使うことの方が多いが、JIS規格では「回路印刷板(または積層回路印刷板)」と呼んでいる。

  3. パソコンのマザーボードなどは、典型的なPCBである。


インフレーション宇宙[いんふれーしょん・うちゅう](参考)

  1. 宇宙活劇における宇宙の基本構造の一つ。

  2. 「強力な敵をやっとの思いで倒したと思う間もなく更に強力な敵が現れ、今までのパワーアップの努力がほとんど無に帰し、時にはスタートラインからやり直し」という現象が、シリーズの続く限りくり返される宇宙のこと。

  3. 類似のものに「ドラゴンボール宇宙」「ウィザードリィ宇宙」等がある。何れも一回入り込んだが最後、容易には脱出不可能である。


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ウォーゼル[うぉーぜる](銀河パトロール隊ほか)

  1. ヴェランシア人。元「対デルゴン工作員」の一人。 その種族の中でも際立って強力なテレパシー放射能力を持ち、レンズなしでもレンズマンの水準を凌ぐ能力の持ち主。

  2. 「銀河パトロール隊」においてキニスンと出会った後レンズマンとなる。
    やがて第2段階レンズマンの一人としてキニスンの子供たちの後見人ともなり、対ボスコーン戦争末期における重要な役割をになうことになる。


ウェスチングハウス[うぇすちんぐはうす](銀河乞食軍団)

  1. 原子炉のメーカ...らしい。

    普及しているが耐久性にやや難が有り、金平糖錨地では「やっぱりウェスチングハウスの炉は弱いねえぇ」と評判が悪いようである。


ヴェランシア人[う”ぇらんしあじん](銀河パトロール隊ほか)

  1. 地球人,リゲル人,パレイン人らと並び、銀河文明を支える有力な知的種族の一つ。

  2. 複数対の目が飛び出しているほかは、体長9メートルにも及ぶ巨大な有翼ドラゴンと言うべき外観の生物。リラックスする時は金属の柱に巻き付いて休息する。

    強力なテレパシー放射能力を持つが、テレパシーに対する防御(意志力)の方は放射能力に比べて弱く、このため、独自の精神波遮蔽装置を開発するなどの抵抗を試みるものの、長らくデルゴン人の支配下(一種の食用家畜)にあった。 キニスンとヴォーゼルとの出会いをきっかけにして銀河分明の一員となった。銀河パトロール隊との協力体制によりデルゴン人を圧倒し、その「くびき」から逃れることができた。


宇宙斧[うちゅう・おの](銀河パトロール隊,ほか)

  1. 宇宙服を着用した上でも自在に使用できるように設計されたバトル・アックス(戦闘用斧)のような兵器で、斧、こん棒,なた,矛などの特徴を良いとこ取りした設計になっている。

    はっきりとは書いてないが、手袋をしていても握り易いようにグリップが細めに設計されているように思われる。宇宙服の一部として半内蔵されている可能性もある。

    携帯ビーム兵器の場合どうしても出力に限界があり、厳重にシールドされた宇宙服を貫通できないことも珍しくないが、こうした対ビーム・シールドも「宇宙斧のような強力な打撃系武器(運動量兵器)に対しては、効果的な防御手段がない」とされるため、銀河パトロール隊の標準装備の一つとして採用されている。

    特に接近戦・乱戦においては、訓練された兵員が使用すれば携帯型ビーム兵器よりも使いやすく確実であるため、特にヴァン・バスカークのような「筋肉もりもり系」のパトロール隊員には愛好されている。

  2. こうした打撃系兵器(運動量兵器)に対抗するためには、「銀河パトロール隊」のラストに登場するような完全装甲宇宙服が必要なのだろう。

    もっとも単純に装甲だけ増してもダメで、強力な打撃を食らった時には「装甲部は無事だが中身はグシャグシャ」ということになりかねない。テーブルトークRPGの経験のあるかたならよくご存知であろうが、打撃系武器と言うのは実にやっかいである。

  3. 機動戦士ガンダムに登場する「モビルスーツ・ザク」の「ヒートアックス」の原イメージの一つと言ったら言い過ぎ...だなあ。

 
宇宙船[うちゅう・せん](参考)
  1. 宇宙空間を移動するための乗物の一つ、またはそのような乗物全般のこと。

    紛れもなく飛行機械の一種であるにも関わらず何故か「船」と呼ばれているが、これはどうした訳なんだろう? 宇宙を海にたとえるものとして「星の海」という言い方があるが、これは宇宙「船」という言葉が先にあり、これによって呼び起こされたイメージのように思える。

    たぶんこいつの起源は、神話・伝承にまで遡るものなのであろう。例によってろくろく調べずに書いており全くもっていい加減で申し訳ないのだが、神話・伝承の中に月や太陽に旅行するものがあれば、その移動手段は何らかの形の「船」となるのが自然だろう。古代の人々にとっても天体への旅は十分に遠出であると思われたであろうし、古代遠出する乗物といえば船が自然と思われるからである。

  2. 宇宙を行く乗物を「船」に例えることから、宇宙の軍隊は海軍の延長イメージで語られることが多い。多くの場合宇宙船の集団は「艦隊」であって、「編隊」と描写される作品は少数派であろう。

    ところがSF映画の本などを見ていると、戦後しばらくの間は「宇宙軍=空軍から発達した組織」「宇宙船=高度に発達した航空機」というイメージが結構強かったように思われる。これはやはりマーキュリー計画から始まる一連のアメリカの有人宇宙船打ち上げの影響と考えねばなるまい。それらのパイロットたちはほとんどすべてが航空機パイロット出身であり、宇宙船乗りは最高のパイロットというイメージがあったのではないだろうか?

  3. 作品中の宇宙船のイメージというやつは、作品の背景世界の技術水準(リアル〜オーバテクノロジ)によって如何ようにもなり得る−−−本来の順番で語るのであれば、むしろ「背景世界の影響をモロに被ってしまう」と言わねばならないのだろう。

    宇宙ものSFの読者にとって、宇宙船という存在は興味のポイントの一つであり、またそれだけに作品の印象をかなりの部分決めてしまう程の重要な存在である。しかもストーリが進行する舞台装置であり、かつそれ自身が「飛び」「吠え」「戦う」重要なキャラクタでもある。

     

宇宙戦争[うちゅう・せんそう](宇宙戦争)
  1. H.G.ウェルズ作「宇宙戦争」。発表年は1896(明治29年)。火星人による地球侵略を描いた、多分最初の記念碑的作品。
    ジュールベルヌの「月世界旅行」と並んで、宇宙ものSFというジャンルが生み出される下地になった作品のひとつ。「隕石形の宇宙船」「タコ型の火星人」「3脚戦車」「荒廃したロンドン市街」などのビジュアルなイメージもサービス満点で、この意味からも後の宇宙活劇の原点のひとつと言える。

    発表後すでに100年が経過し知的火星人の存在が科学的に否定されて尚、「タコ型の火星人」という消し難いイメージを、我々は楽しんで持ち続けている。
    ウェルズが本作を書いた目的は一次大戦後の不安定な世界情勢に対する警告であったとも言われているが、すでにそちらの方はすっかり(とまでは言わないものの、ほとんど)忘れ去られ---現在大人になってから本作を読む人はどのくらいいるだろう?---彼の創造した火星人の強烈なイメージのみが生き続けているのである。
    これもまた一つの「SFってのは絵だねぇ」ってことかしらん?

  2. 小学校の図書館で少年向けにリライトされた宇宙戦争と出会ったことが、筆者にとってはSF読者としての出発点のひとつであり、懐かしく忘れられない作品の一つである。

    あのころ、日本作家の手による年少読者向けのSF作品は絶対数が少なく、時折出版される少年少女向けのSFは翻訳・(リライト)もので構成された全集形式が主流であった。そういう意味では書店の棚は今よりもずっと寂しかったはずだが、そのおかげで厳選された---SF色の濃い作品群に早い時機から出会うことができたのであるから、実は幸運であったとも言える。(その代わりに、それらのSF純度が高い分か?続けてSF読者になる人間の数は決して多くはなかったが....)

  3. オーソンウェルズによるラジオドラマが一種のドキュメンタリー仕上げになっていたため、これを途中から聞いて本当のニュースと思い込んだ視聴者が続出し、ほとんど一晩中全米にパニックを起こしたというウソのような本当のエピソードは余りにも有名で、後にこの事件を題材にした映画が作られたほどである。


宇宙のスカイラーク[うちゅう・の・すかいらーく](宇宙のスカイラーク)

  1. スカイラークシリーズ第一作のタイトル。

  2. シリーズ第一作において主人公達が駆る宇宙船の名称。命名者はドロシー.ヴェインマン。

  3. 筆者の所有する文庫本は購入後27年ほど経過しており、そろそろ古本特有の臭いがキツクなって来た。通勤途中の満員電車内で読むのはちょっと気後れしてしまいそうな状態で、これでは文庫本読んでんだか原書の「アメージング」眺めてんだか…

  4. 押川春浪がもう少し長生きしていたら、これを読めたかもしれない。もし春浪がこれを読んでいたら大いに刺激されたことは間違いなく、大傑作がもう1・2作生まれていたかも知れないと思えてならぬ。誠に残念である。

    同じことは「火星のプリンセス」にも言えるが、こちらは「スカイラーク」とは違って一応春浪の生前に発表されているので、わずかながら可能性はある。その内、横田順彌氏の天狗倶楽部シリーズに火星のプリンセスが登場するかもしれません。


宇宙の破壊者[うちゅう・の・はかい・しゃ](参考)

  1. 元の綴りは"Universal-Wrecker"。ご存知エドモンド・ハミルトンの通り名である。その作品中で宇宙を破壊するがごとき大規模なドンパチを繰り返し取上げたため、このようなアダ名を頂戴することとなったらしい。
    キャプテンフューチャー・シリーズに登場する悪役の一人「破壊王(Wrecker)」の呼び名が、ハミルトン自身のそれに由来することは言うまでもない。

  2. ところでハミルトンがデビュー間もない頃、「危機に陥った世界を天才科学者が救う」といった内容の話ばかり書いていたため「宇宙の救世者(World-Savor)」と呼ばれていた。
    とは、あまりにできすぎていてウソのようだが本当のことらしい。(詳しくは東京創元社刊,大元帥著「科学小説神髄」を御覧下さい。)

    よーく考えてみると、前者と後者でハミルトンの作品の本質はあまり変わってないような気もするのだが、それにも関わらずまるっきり逆の呼び名が付いてしまったのだった。


ヴァレロンのスカイラーク[う”ぁれろん・の・すかいらーく](ヴァレロンのスカイラーク)

  1. スカイラークシリーズ第三作。前作「スカイラーク3号」のラストシーンから始まる。

    純粋知性体との戦いで破壊されたスカイラーク3号からの脱出手段として、「絶対に壊れない物質を絶対に防げない力で圧迫すると、論理的矛盾に行き所を失った物質が苦し紛れに4次元の世界へ行ってしまう。」というアイデアが実におおらかというかスミスらしく、秀逸という他はない。

  2. 今度の敵は、人類形生物の絶滅をもくろむ不定形生物クローラ族である。4次元の世界から元の3次元空間に帰還したシートン一家は惑星ヴァレロンの人類とクローラ族との戦いに巻き込まれる。ヴァレロン人と協力してクローラ族を撃退したシートンらだが、純粋知性体と化したデュケーヌとの戦いが待っていた!

  3. 本作の終わり方を見ると、スカイラーク・シリーズは3作で完結の予定であったと思えてならない。と言うか、4作目の「スカイラーク対デュケーヌ」がいささかまとまりを欠く出来栄えだけに、ここで終わっいても良かったかなあとも思えてならないのである。


運動量の保存則[うんどうりょう・の・ほぞんそく](参考)

  1. 「閉じた系の内部において、運動量(速度*質量)のベクトル的な合計は常に一定である」という法則。別の言い方をすると「何かを反対側に押すこと無しには推進力を得ることはできない」と言うことになり、乳母車からロケットまであらゆる乗物の作動原理である。

    この法則があるため加速噴射と減速噴射(逆噴射)とは同等でなければならず、目的地到着時に着陸可能(速度=0)であるような宇宙船の場合、行程の中間地点で180°回頭し逆方向へ噴射する必要がある。

  2. 非常に基本的な物理法則でありながら、「エネルギーの保存法則」ほどには注意を払われず、大抵は無視されている気の毒な法則。


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液体ロケット[えきたい・ろけっと](参考)

  1. 液体燃料を燃焼させて推進力を得るロケットのこと。正式には液体燃料ロケットと呼称される。近代ロケットの祖:H.ゴダートのロケット〜スペースシャトルの主エンジンまで、現代ロケットの主流を成していると言って良い。
    大出力がえられ、推進力の制御が比較的容易であり、燃料自身を燃焼室の冷却に利用できるなど、固体燃料ロケットに対して技術上のメリットが多い。

  2. 反面、燃料を超低温に維持しなければならない等運用上の難しさもある。また固体燃料ロケットよりもエンジンの構造が複雑で且つ発射に手間が掛かり、コストは高くなる傾向にある。

  3. コメット号の場合、粉末状にした銅が燃料の主成分であるから、「粉体ロケット」と呼ぶべきか?


SFRPG[えすえふ・あーるぴーじー](参考)

  1. 昔々、ワールドコンの会場で「外宇宙からの転校生」というのを買ってきたことがありましたが、大方の予想通り、「うる○やつら」のRPGと呼ぶべき代物でした。ほかにもチャート式でプレーヤーキャラクタの「背負った暗い過去」がすらすらと出来てしまう巨大ロボットものRPG、とかも買ったなあ。最近見かけないが...今度探しとこう!!

  2. 結局のところ、マスターにSF作家としての素養がない限りは、いくらシステムや小道具に凝ってみたところで、「SF」RPGというやつは成立しないような...
 
SF教室[えすえふ・きょうしつ](参考)
  1. ポプラ社刊(1971年)筒井康隆氏・編(共同執筆伊藤典夫氏,豊田有恒氏)。
    昭和30年〜40年生まれのSFファンにとって、「SF教室」は実に懐かしい書名だ。
    筆者が本書に出会ったのは中学の図書館であったが、人気があってなかなか順番が回ってこなかったと記憶している。当時の多くのSF少年と同じく、その後しばらくの筆者にとって貴重な読書ガイドとなった。

  2. 最初にこれを読んだ時「スペースオペラは欠点だらけ。」と書いてあったのを真に受け、スペオペなんて誰が読むものか!と(恐れ多くも)決心していたことがある。今考えると若気の至りとしか言う他はない。(大体が、国内で買えるのはこういう選択を潜り抜けたものなのであって、所謂「二束三文の宇宙活劇」というのは、例え読みたくてもなかなか手に入るものではない。これは現在でも基本的には同事情である。)
    しかしながら「カラダは正直なもの」とか。ふと目にとまった「少々ケバイ絵柄の文庫本」が目に焼き付いて以来忘れられず、どうにも気になって気になってしかたないのだ。ある時「筒井さんごめんなさい」と念じて手に取ったその本がまさに「火星シリーズ」であり、それ以来転びに転んで、底無し沼に沈むように中毒者への道を進むことになろうとは…

    きっと当時は日本中のあちこちで似た様なことが起きていたのでしょうね。

  3. 本書の詳しい内容については「SFオンライン3月29日号」に紹介されています。ぜひご覧ください。


X金属[えっくす・きんぞく](宇宙のスカイラーク)

  1. シートン・クレイン効果(ほぼ100%の物質/エネルギー変換)において触媒として作用する特殊な物質。本来地球上には存在しなかったものと思われ、地球外から隕石等によりもたらされたと考えられている。そもそも、金属なのかどうかすら良く分からない。

  2. リチャード・シートンがプラチナの抽出残り溶液中から偶然発見した希有金属の一種。当初の分量は溶液で約400ミリリットル(マーク・デュケーヌによる見積量)に過ぎなかったが、後にX惑星において採取され十分な量が確保された。

  3. 発見の経過からも明らかなように、シートンの勤務していた希有金属研究所の所有物(研究試料)であったが、実業家としてのセンスを持ち合わせていたレイノルズ・クレインの提案により競売にかけられ、シートンが10セントで落札し正式に法的所有権を得た。今なら“インサイダー情報の悪用”として糾弾されそうな手口である。しかしながら、これ以後の莫大な利権を考えればまさに天国と地獄の分かれ道であり、この事実一つだけでもクレインを仲間に入れた甲斐があろうというものである。


X光線[えっくす・こうせん](宇宙のスカイラーク)

  1. ワールドスチールから納入された鋼材の非破壊検査に使用され、意図的に不良品が送られてきたことを突き止めるのに役立った。

  2. 原書を見ないと何とも言えないが、要するに“X線”のことと思われる。“宇宙のスカイラーク”にはいたるところに“Xなんとか”が出てくるので翻訳の筆が滑ってしまったらしい。

  3. ところで、分厚い鋼材内部の非破壊検査にX線が本当に有効なのであろうか、はなはだ疑問ではある。


X動力[えっくす・どうりょく](宇宙のスカイラーク)

  1. シートン・クレイン効果により膨大な運動エネルギーを取り出せ、スカイラーク1〜3号の動力源として用いられる。燃料として“銅”が用いられることが多いが、ウラニュームを用いることにより、更に高出力が得られることが知られている。

  2. 言うまでもなくX動力は制御可能なのであるが、それでは実際にどのように制御しているのであろうか?
    特に、爆発的なエネルギーの方向をどうやって決定しているのであろう。実はこのヒントは原作の冒頭部分にある。

  3. シートン・クレイン効果の最初の事例は、“銅のスチームバスが、研究室の壁を突き破って空のかなたに飛んで行った”であった。シートンにとって予想もしない現象であり、もちろんあらかじめ運動の方向を決めておけた訳もない。幸運にも壁に向かって飛んで行ってくれたのだが、この時スチームバス(銅製)の上にX溶液が微量こぼれていたのであるから、少なくともX溶液の付着した方向と運動の方向とは一致していない。

  4. 第2の事例では、“机上に置いた銅線が、壁に穴を穿ってすっ飛んで行った”のであった。この時には銅線のX溶液が付いた方を壁側にして実験している。これを最初の事例と併せて考えると、運動方向とX溶液の付着位置とは全く無関係である事が分かる。

  5. それどころか、銅線は常に外の壁に向かって飛んでおり、決して天井や床や隣の実験室に向かっては飛んでいないのである。シートンの実験室にはデュケーヌのそれを含んで隣室が2つあり、さらに1面は通路側であることが文面から分かるので、Xが飛んでいく壁は常に同一方向の面であると断定できる。つまりX動力による運動の方向は常に一定方向だったのである。これは何故か?

    ここで思い出して欲しいのが、隣室に設置されたデュケーヌの“ホワッチ・トロン”の存在である。文面から明らかなように、X動力はホワッチ・トロンが起動している時のみ発動し、ホワッチ・トロンの発する一種のエネルギー場(ホワッチ・トロン場)と電流が“X動力反応のトリガー”となっているのである。

    このような“エネルギー場の中に置かれた電線に電流を流すと、特定の方向に力が働く”現象は、我々の日常にも存在していて“ファラデーの左手則”として知られており、その応用製品の代表が電気モータである。“左手則”はスミスの時代以前の発見であるから、X動力のアイデアを練るに際し“左手則”が基本イメージになった可能性は高い。

  6. そうであるとすると、“左手則”において力の働く方向は磁場と電流の方向で決定されるのであるから、X動力においても類似の現象が起きていると考えて良い。X動力によって得られる運動方向は、反応が起きる場所のホワッチ・トロン場の方向が運動方向を決めているのである。(シートンの実験では電流の方向には特に気を使ってないから、電流の方向は運動の方向を決めていないようである。)


エネルギー保存の法則[えねるぎー・ほぞん・の・ほうそく](参考)

  1. 最も基本的かつ有名な物理法則の一つで、「外部との入出力がない場合、エネルギーは勝手に減ったり増えたりしない」というもの。いわゆる永久機関が実現不可能なのは、この法則に引っかかるためである。

    物質はE=MC^2の公式によりエネルギーと等価であるから、「物質保存則」はエネルギー保存則のサブセットと考えることができる。

  2. この法則はあまりにも有名なため、さすがの宇宙活劇においても正面からこれをひっくり返したものは「少ない」。
    本当は「無い」と書きたいところであるが、その気が無くても無意識にエネルギー保存則を無視している作品は結構有りそうだから...断言できないのである。


FTL[えふてぃーえる](参考)

  1. Faster than light の略。すなわち超光速のこと。

  2. 超光速が当たり前の宇宙活劇の世界では、めったにお目にかからない略語。

  3. 超光速がまともには不可能なハードSFでは、まずお目にかからない略語。


エリダン[えりだん](ファースト・レンズマン)

    ファースト・レンズマンの作中でたびたび言及される星系。
    その割には詳しいことは不明で、いわゆる「エリダヌ」星系のことでは?と思われる。


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俺ら宇宙のパイロット[おいら・うちゅう・の・ぱいろっと](妖星ゴラス)

  1. 東宝映画「妖星ゴラス」の挿入歌。日本特撮史上に残る名曲と言わずばなるまい。

  2. これを聞いて血が沸かないようでは、クラシック宇宙活劇の愛好者とは言えぬ。


大空の恐怖[おおぞら・の・きょうふ](ドイル傑作選3)

  1. 新潮文庫「ドイル傑作選3」所載の短編。現在書店ではやや入手困難(ごく希に見かけます)。

  2. 飛行機で高度記録に挑もうとしたパイロットが飛行中に何者かに襲われ墜落するという事故が続いた。あるパイロットは墜落死体の首から上だけが消失していたと言う。果たしてイングランド上空3万フィートの大空に潜むものは何か?そして青年パイロットの残した手記に記された“大空の密林”とは?という内容の“航空ホラー”短編。

  3. SF味は薄いですがウルトラQあたりに入っていても違和感のないお話で、結構面白いです。
    ドイルはホームズものが余りにも有名ですが、他の短編にもなかなか良いものが多いようですなあ。古本屋で見つけたら買っておきましょう。

  4. 「エアーワンダー・ストーリーズ」あたりに載っていてもおかしくない(もしかして再録されているのでは?)内容なので、項目としていれました。


丘[おか](ファースト・レンズマン)

  1. 「三惑星連合軍」本部の通称。 直径数マイルにおよぶ丘陵地帯を地上から地下深くまで要塞化しているため、このように呼ばれる。

    大統領官舎をホワイトハウス、また国防総省をペンタゴンと呼ぶようなもので、さりげない言い方がリアリティを生む好例。

  2. 「ファーストレンズマン」当時は既に旧式化しているとの描写があるが、バージル・サムスを暗殺(三惑星連合軍本部ごと消滅)するために来襲したボスコーン艦隊の攻撃にも耐え切ったほどの防御力を誇る。

 
おネジっ子[おねじっこ](銀河乞食軍団)
  1. 星海企業整備部の見習い整備士たちの呼称。彼女らを育成する一連のシステム(おネジっ子制度)は、“嫁入り前の礼儀作法見習いとして好適”と近隣一帯の年頃の娘を持つ親たちに認識されており、また娘たち自身からも“手に職を付けるよい機会”として歓迎されており、志願者には困らない状態のようである。星海企業内部で正式用語(社内規定に載っている)かどうかは良く分からない。

  2. 彼女ら(ご存知のように星海企業整備部の構成員はほとんどが女性である)が一人前の整備士として認められ、“おネジっ子”扱いが解けるのには、整備士としての実力だけでなく“一般社会に出しても恥ずかしくない”程度の躾が必要とされているようである。

  3. モトネタは英語のスラング“Bolt & Nut Guy”(機械いじりの好きな野郎の意味)から。

  4. そういえば直接(と言うか間接的にも)関係はないが、ビデオゲーム“ぷよぷよ”を作っているコンパイル社では、新入社員は“丁稚”(このモトネタはマンガ“県立地球防衛軍”と推測できる。日本の伝統的な呼称と言えばその通りではあるが。)と呼ばれていたそうな。


オーバー・テクノロジー[おーばー・てくのろじー](参考)

  1. いわゆる「超技術」のこと。
    「オーバー」は「オーバー・ロード」を連想させることもあり、「神の御技のような」または「魔法のような」超技術を指して言うことが多い。現実に根っこの生えたやつは、どんなに驚くべきものでもオーバ・テクノロジとは言うまい。

    筆者が個人的に考える「オーバー・テクノロジのキーワード」は以下の様なものである。
    「核の直撃に耐える透明な超合金」「テレパシーを持った人工知性」「人工重力」「ボタン電池サイズの核融合」「単分子構造の素材」「恒星系の改造・移動」「瞬間物質移送器」「効率100%の物質/エネルギ相互変換」「真空管で作った超空間無線機」等々…
    いやー、我ながらアナクロですね。しかしこういうのが最低一つ含まれていないと、筆者にとっては宇宙活劇にならん様な気も。

  2. フランクリード・ライブラリなどの「インベンション・ストーリ」に出てくる発明や理論は「超工夫」と言うべきであろう。


オールド・クリップ[おーるど・くりっぷ](宇宙のスカイラーク)

  1. シートンがスカイラーク試作機の通称“ザ・クリップル”をつづめてこのように読んでいた、と言うのであるが“ザ・クリップル”の方がよほど音節が少ない。“つづめる”ってのは“縮める”とか“省略する”とかいう意味じゃないのかな?

  2. 和訳は“よぼよぼ爺さん”とでも言ったところか。 確かに“ザ・クリップル”(直訳すると”きずもの“そのほかの放送禁止用語になってしまう)よりは上品な言い方ではある。



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